食品業界に棲む日々

「食品業界のつながりをデザインする」というミッションで食品業界向けのサービスを展開している株式会社リンクアンドシェアの代表の中間秀悟です。

そもそも君の思い出

予備校時代に「そもそも君」と呼ばれている人がいた。

 

「先生、それはそもそも〇〇じゃないですか?」

「そもそも、その説明だと〇〇になりませんか?」

 

などと発言に「そもそも」という言葉を使うのが癖で

何となく僕らは遠巻きにいつも彼を眺めていた。

 

彼はとても真面目な学生で、休み時間に遊んでいた僕らとは違い、

常にテキストを広げて勉強をしていた。

 

最近、自分の事業や食品業界のことを考える時に、

「そもそも買い手のニーズって何だっけ?」とか

「そもそも製造工場って単純に売上が伸びればいいと考えてるのかなあ」とか

「そもそも問屋っていつの時代から存在するんだろ?」とか

僕ら自体が「そもそも」を連発していて、ふいに彼をことを思い出した。

 

僕らが事業を考える時に「そもそも」は魔法の言葉だ。

 

目の前にあって、もつれ合っている糸をほどこうとしている時、

その解決の糸口を教えてくれることがある。

 

「そもそも買い手のニーズって何だっけ?」という問いに対しては、

通販やスーパーや給食や外食などのニーズを事細かに書き出して検証を行う。

 

通販はオリジナル食品の製造依頼が多い。

スーパーは他社で売れた実績がある商品が採用になることが多い。

給食は国産原料のニーズが高い。

外食は専門性が高くなっていて、他が扱っていない商材へのニーズが高い傾向にある。

 

などなど。

 

買い手のニーズは、業態や地域などによってバラバラだが、

「差別化」というキーワードはある程度共通している。

 

消費者の胃袋の量は決まっているので

他社よりも魅力的なお店や売り場にしなければお客さんが来てくれず

当然のことながら売上が下がっていってしまう。

 

 

リンクアンドシェアという会社は

この根本は「差別化」で共通しているが、それでいてバラバラのニーズに

応えていく企業体でなければならないし、

クラウドフードというサービスは

このそれぞれに違うニーズや問題点を解決するサービスでなければならない。

 

そうやって「そもそも」「そもそも」と言いながら

買い手や製造工場や問屋のことを掘り下げながら考えた上で

「これならどうだ!」というアイディアでクラウドフードを2月と3月に

2段階で完全リニューアルする予定で進めている。

 

久しぶりに「そもそも君」のことを思い出して、

ある記憶も蘇ってきた。

 

「中間くん、僕この前初めてパチンコ屋さんに行ったんだよ。

 それで数字が揃って、玉が出たんだけどどうしたらいいか分からなくて

 みんながやっているように球を受付に持っていたらこんな物をもらったんだけど」

 

彼は、いきなり僕に話しかけてきて鞄の中からプラスチックケースに入った

金のボールペンを3本出してきた。

 

「それでこのケースを開けようと思うんだけど開かなくてさ、

 どうやったら開くか知ってる?」と聞いてきた。

 

当時埼玉県のパチンコ屋さんは、お金と引き換える景品がボールペンで

景品交換所の存在を知らない「そもそも君」はそれをボールペンとして

使用しようとしていたのだ。

 

「だめだめ!開けちゃダメ!」

 

と言ってから彼を景品交換所に連れて行ってあげて換金をしてあげた。

 

あの真面目な「そもそも君」がパチンコをやったということに驚いたし、

何だか金のボールペンのケースを強引に開けようとしていたのもおかしかった。

 

 

学生時代からあれだけ「そもそも」の癖がついていた彼は

もしかしたらとてもスゴイ事業を成し遂げているんじゃないだろうか?

と妄想してみる。

 

本名を覚えていないので、再び会うこともないと思うが、

このタイミングで是非リンクアンドシェアに入社してもらって

二人で「そもそも」「そもそも」と言い合ってみたいものだ。

 

そして、面接の時には是非聞いてみたい。

 

「そもそもさぁ、なんであの時パチンコなんかやったの?」

 

彼は冷たく言うだろう。

 

 「そもそもそんな昔のこと答える必要ある?」